
近年、CG制作の現場でCADデータを活用するケースが増えています。従来は設計や製造の分野で使われていたCADですが、3DCG技術の進化により、製品プロモーションや建築パース、アニメーション制作など幅広い分野でそのデータが活用されるようになりました。
この記事では、CADとCGの違いをわかりやすく解説し、両者の連携や活用ポイント、実際の事例、ソフトウェア選定のコツまで詳しく紹介します。「CADとCGの違いがよくわからない」「CADデータをCG制作に活かしたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
CADとCGの違いとは?基本から分かりやすく解説

CADとCGはどちらもコンピュータ上で3Dモデルを扱う技術ですが、その目的や使われ方には大きな違いがあります。CADは主に設計や製造のために正確な寸法や形状を表現するのに対し、CGは視覚的な美しさやリアルな表現を重視します。この違いを理解することで、両者の強みを活かしたデータ活用が可能になります。
CADとは?仕組みと主な用途・業界での役割
CAD(Computer Aided Design)は、コンピュータを使って設計図や製図を作成するためのツールです。主に建築、機械、電気、土木などの分野で使われ、正確な寸法や形状、構造情報を持つデータを作成できます。
設計変更や部品の組み合わせも容易で、製品開発や建築設計の効率化に欠かせない存在です。いまや目の前にあるほとんどの製品や道具などがCADデータを用いて製品化されています。また、3DCADでは立体的なモデルを作成し、シミュレーションや解析にも活用されます。
- 建築設計(住宅・ビル・インテリア)
- 機械設計(自動車・家電・産業機械)
- 電気・電子回路設計
- 土木・インフラ設計
CGとは?立体的な空間の表現技法と活用分野
CG(Computer Graphics)は、コンピュータを使って画像や映像を作成する技術です。特に3DCGは、立体的なオブジェクトや空間をリアルに表現できるため、映画やゲーム、広告、建築パースなど多彩な分野で活用されています。
CG制作では、見た目の美しさやリアリティ、インパクトのあるビジュアル表現が重視されます。また、アニメーションやシミュレーション、VR/ARコンテンツの制作にも欠かせない技術です。
- 映画・アニメーション制作
- ゲーム開発
- 広告・プロモーション映像
- 建築パース・インテリアビジュアル
- VR/ARコンテンツ
CADはソリッドモデル、CGはサーフェスモデル
CADデータは主に「ソリッドモデル」と呼ばれるかたちで3D形状を表現します。ソリッドモデルは、物体としての中身(体積や質量)を持つモデルのことです。例えば立方体や円柱を作成した場合、その内部まで“実体が詰まっている”イメージです。このソリッドモデルでは、体積、面積、重心など、実際のモノづくりや製造に必要な情報が正確に扱えます。設計を前提としたCADソフトでは、穴を開けたり、部品同士を組み合わせたり、物理的な計算に耐えうるように、このようなモデルで物体を定義します。
一方、CGデータでよく使われるのが「サーフェスモデル(面モデル)」という考え方です。サーフェスモデルは、物体の“表面だけ”をポリゴンなどの面で覆って表現します。中身までは定義せず、「外側から見たときの形状」だけが重要です。例えばゲームや映画のキャラクターは表面がどのように見えるかを重視し、サーフェスモデルを使います。このモデルは中身を持ちませんが、代わりに非常に複雑な形状やリアルな質感を柔軟に表現できます。
CADデータは“実物として作ること”を前提に体積や中身を持つ「ソリッドモデル」で物体を作り、CGデータは“見た目をリアルに描くこと”を重視して表面だけの「サーフェスモデル」で物体を作る、という違いです。
CADとCGの違いを比較|目的・データ・作業フロー
CADとCGは、目的やデータ構造、作業フローに明確な違いがあります。
CADは正確な設計や製造のためのデータ作成が主目的で、寸法や構造情報が厳密に管理されます。一方、CGは視覚的な表現や演出を重視し、リアルな質感やライティング、アニメーションなどが重要です。両者の違いを理解することで、適切なデータ変換や連携が可能になります。
項 目 | CAD | C G |
主な目的 | 設計・製造 | ビジュアル表現 |
データ構造 | 寸法・構造重視、パラメトリック型 | 見た目・質感重視、ポリゴンメッシュ型 |
形状モデル | ソリッドモデル | サーフェスモデル |
作業フロー | 設計→製造・建築 | モデリング→レンダリング→アニメーション |
3DCADと3DCGの使い分けと連携の必要性

3DCADと3DCGは、それぞれ得意分野が異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。設計や製品開発では3DCADが不可欠ですが、完成品のイメージやプロモーション、顧客への提案には3DCGが効果的です。
近年は、3DCADで作成したデータを3DCGソフトに取り込み、リアルなビジュアルやアニメーションを制作する連携が一般的になっています。この連携により、設計と表現の両面で高品質な成果物を効率よく生み出すことが可能になります。
3DCADが得意な設計・製品開発の分野
3DCADは、精密な設計や製品開発の現場で圧倒的な強みを発揮します。自動車や航空機、家電製品、産業機械など、複雑な構造や厳密な寸法管理が求められる分野では、3DCADによる設計が不可欠です。
また、部品同士の干渉チェックや組立シミュレーション、強度解析なども3DCADの得意分野です。設計変更やバージョン管理も容易で、製造現場との連携もスムーズに行えます。
- 自動車・航空機の設計
- 家電・精密機器の開発
- 産業用ロボット・機械装置の設計
- 建築・土木構造物の設計
3DCGが活躍する映画・ゲーム・ビジュアル表現
3DCGは、映画やゲーム、広告などのビジュアル表現分野で大きな役割を果たしています。リアルな質感や光、映り込みの表現、ダイナミックなアニメーションなど、視覚的なインパクトを重視した制作が可能です。
また、建築パースやインテリアデザイン、プロダクトビジュアルなど、完成イメージを分かりやすく伝えるためにも3DCGは活用されています。近年はVRやAR、Web3Dなど新しい表現分野でも3DCGの需要が高まっています。
- 映画・アニメーションのCG映像
- ゲームの3Dキャラクター・背景
- 広告・プロモーション映像
- 建築パース・インテリアCG
- VR/ARコンテンツ
CADデータをCG制作に活用する意義とメリット
CADデータをCG制作に活用することで、設計段階の正確な情報を基にリアルなビジュアルを短期間で作成できます。これにより、製品の完成イメージを早期に共有できるほか、プロモーションや営業資料、製品カタログ、プレゼンテーションにも活用可能です。
また、設計変更があった場合も、CADデータを更新することでCG側のビジュアルも迅速に修正対応できるようになり、業務効率が大幅に向上します。
- 設計とビジュアルの一貫性確保
- 制作期間の短縮、効率化
- 設計変更への柔軟な対応
- 高品質なプロモーション資料の作成
CADデータからCG制作へ|変換・活用のポイント

CADデータをCG制作に活用するには、データ形式の変換やモデルの最適化が重要です。CADとCGではデータ構造や必要な情報が異なるため、適切な変換手順を踏むことでスムーズな連携が可能になります。
ここでは、CADデータの主な形式や変換方法、中間ファイルの活用、モデル精度のチェックポイントについて解説します。
CADデータの形式(フォーマット)と変換方法
CADデータにはさまざまなファイル形式が存在します。代表的なものとして、STEP(.step/.stp)、IGES(.iges/.igs)、Parasolid(.x_t/.x_b)、AutoCAD(.dwg/.dxf)、SAT(.sat)などがあります。
CGソフトで直接読み込めない場合は、中間ファイル形式に変換して取り込むのが一般的です。変換時には、形状の精度や階層構造、テクスチャ情報の有無などに注意が必要です。
CAD形式 | 特 徴 | 主な用途 |
STEP | 国際標準、互換性が高い | 機械・製品設計 |
IGES | 古くから使われる汎用形式 | 機械・自動車 |
Parasolid | 高精度なソリッドデータ | 3Dモデリング |
SAT | 互換性が高い、データ精度が高い | 機械・製品設計 |
CADデータの取り扱いについて
CADデータの取り扱いには細心の注意が必要です。例えば自動車メーカーの場合、CADデータが外部に流出してしまうと、競合メーカーでその車が量産できてしまいます。CADデータは機密情報であり産業上のリスクが存在するため、CG制作会社が3DCG作成に利用するには秘密情報保持契約(NDA)を交わす必要があります。
また制作環境でも、CADデータを外部に出さないためにCGクリエイターがメーカーの設計部門に出向し、CGデータ作成が完了するまで隔離された状態で作業する、入退室管理を徹底する、などのリスク管理が重要になります。当社ではそのような対応をとることで制作実績を上げています。
主要な中間ファイルと3Dモデル変換の流れ
CADデータをCGソフトで扱う際は、中間ファイル形式(例:OBJ、FBX、STLなど)への変換が一般的です。これらの形式は多くの3DCGソフトでサポートされており、形状データの受け渡しがスムーズに行えます。当社では、Geomagic、Magics、3ds MAXを使用しています。
変換の流れは、まずCADソフトで中間ファイルにエクスポートし、その後CGソフトでインポートしてマテリアルやテクスチャ、ライティングなどを追加します。変換時には、ポリゴン数や法線情報、スケールの調整も重要なポイントです。
注意したい形状・精度・モデルのチェックポイント
CADデータをCG制作に活用する際は、形状や精度、モデルの構造に注意が必要です。CADモデルは設計用のため、CG用途では不要な細部や過剰な精度が含まれていることがあります。データ変換時にはかなりの確率でエラーが発生するため、どう対処するかはデータの理解と作業の経験値が重要になります。
また、面の向きや法線、ポリゴン数が多すぎる場合は、CGソフトでの処理が重くなる原因となり、多角形ポリゴンの三角形化、テッセレーションの統一、頂点・法線情報の簡略化など調整しなければなりません。事前にモデルをチェックし、必要に応じて最適化を行いましょう。
- 不要なパーツや細部の削除
- ポリゴン数の最適化
- 法線・面の向きの確認
- スケールや座標系の統一
- 頂点・ラインなどのポリゴンを形成しない情報の削除
CG制作におけるCADデータ活用の事例

実際にCADデータをCG制作に活用することで、さまざまな分野で効率的かつ高品質なビジュアル表現が実現されています。ここでは、プロモーション用の映像、高精度のビジュアル資料、ウォークスルーなどのCGアニメーション、試作やモックアップの作成など、具体的な応用例を紹介します。
これらの事例を参考にして、自社の業務やプロジェクトにもCADデータの活用を取り入れてみてください。
製品レビューやプロダクトビジュアルへの応用
CADデータを活用することで、製品の完成イメージをリアルなCGで表現し、レビュー記事やカタログ、プロモーション画像に利用できます。設計段階のデータをそのまま使うため、実物が完成する前に高精度なビジュアルを作成できるのが大きなメリットです。
また、色や素材のバリエーションもCG上で簡単に変更できるため、複数パターンの提案や比較も容易に行えます。
- 新製品のプロモーション画像
- カタログ・ECサイト用の高解像度レンダリング
- 製品レビュー記事のビジュアル
建築・機械分野でのアニメーション・映像制作事例
建築や機械分野では、CADデータを基にCGアニメーションや映像を制作する事例が増えています。建築パースや内観・外観のウォークスルー、機械の動作シミュレーションなど、設計意図や構造を分かりやすく伝えるために活用されています。
これにより、クライアントや関係者へのプレゼンテーションの説得力が大幅に向上します。
- 建築パース・ウォークスルーアニメーション
- 機械装置の動作シミュレーション映像
- 施工手順や組立工程の説明動画
3Dプリンターや製品サイトの画像データの作成
CADデータを3Dプリンター用データや製品サイトの画像データとして活用する方法も一般的になっています。3Dプリンター用にはSTL形式などに変換し、試作やモックアップの作成に利用します。
また、CGレンダリングで作成した高精度な画像は、製品サイトやオンラインカタログ、SNSプロモーションなど幅広い用途で活用されています。
これらによって、製品の魅力を効果的に伝えることが可能です。
- 3Dプリンター用STLデータの作成
- 製品サイト・ECサイト用のCG画像
- オンラインカタログ・SNS用ビジュアル
※ゼネラルアサヒの制作事例はこちら
代表的なソフトウェアと選択のポイント

CADデータとCG制作を連携させるには、対応するソフトウェアの選定が重要です。ここでは例として、BlenderやCAD Sketcherなどの主要な3DCGソフトの特徴、ソフト選定時のポイントについて解説します。
用途や業界、予算に応じて最適なツールを選ぶことで、作業効率や表現力を最大限に引き出すことができます。
3DCGソフトでCADデータを扱う|変換・モデリングのコツ
Blenderは無料で高機能な3DCGソフトとして人気があり、CADデータのインポートやモデリングにも対応しています。STEPやIGESなどのCAD形式は直接読み込めないため、中間ファイル(OBJやSTLなど)に変換して取り込むのが一般的です。
インポート後は、不要なパーツの削除やポリゴン数の最適化、マテリアル設定などを行い、CG制作に適したモデルに仕上げましょう。
- 中間ファイル(OBJ/STL)への変換が基本
- インポート後のモデル整理が重要
- Blenderのアドオン活用で作業効率アップ
CAD Sketcher・主要3DCGソフトの主な機能と比較
CAD Sketcherは、Blender上でスケッチベースのCADモデリングができるアドオンです。他にも3ds Max、Maya、Cinema 4D、Fusion 360など、さまざまな3DCG・CADソフトが存在します。各ソフトの特徴や得意分野を理解し、用途に合わせて選択することが大切です。
下記の表で主なソフトの機能を比較します。
ソフト名 | 主な特徴 | 得意分野 |
Blender | 無料・多機能・アドオン豊富 | CG制作全般 |
CAD Sketcher | Blender用CADモデリング・アドオン | スケッチベースの設計 |
3ds Max | 高品質レンダリング・アニメーション | 建築・映像・ゲーム |
Maya | プロ仕様のハイエンドCGソフト | ゲーム・TV・映画・CM |
Fusion 360 | CADとCGの両方に対応 | 製品設計・試作 |
ソフトウェア選定のポイント
ソフトウェア選定時は、価格や用途、業界での実績を比較検討しましょう。無料で始めたい場合はBlender、有償でも業界標準の機能が必要なら3ds MaxやMaya、設計とCGの両方を重視するならFusion 360などが選択肢となります。
また、サポート体制や拡張性、導入事例も重要な判断材料です。
- 予算に応じた価格帯の確認
- 自社の用途・業界に合った機能
- サポートや導入事例の有無
CADとCGの今後の展望とビジネスへの活用

CADとCGの連携は今後ますます重要性を増していくと考えられます。設計からビジュアル表現まで一貫したデータ活用が進み、製品開発や建築、プロモーション分野での競争力向上に直結します。また、クラウドやAI、VR/AR技術の進化により、CADとCGの垣根がさらに低くなり、より柔軟で効率的なワークフローが実現されつつあります。
ビジネスの現場でも、設計・開発・営業・マーケティングの各部門が同じデータを共有し、迅速な意思決定や高品質なアウトプットを目指す動きが加速しています。
最新業界動向とシステムの進化
近年、CADとCGの業界ではクラウドベースのコラボレーションやAIによる自動化、リアルタイムレンダリングなどの技術革新が進んでいます。これにより、設計データの共有やCG制作のスピードが飛躍的に向上し、グローバルなチームでの共同作業も容易になりました。
また、BIM(Building Information Modeling)やデジタルツインといった新しい概念も登場し、設計から運用・整備・保守まで一元管理できる時代が到来しています。
- クラウド型CAD/CGソフトの普及
- AIによる自動モデリング・レンダリング
- リアルタイムコラボレーションの実現
- BIM・デジタルツインの活用拡大
ビジネス・プロダクト開発での導入事例とソリューション
実際のビジネス現場では、CADとCGの連携による効率化や高付加価値化が進んでいます。例えば、自動車メーカーでは設計データを基にCGでプロモーション映像を制作したり、建築業界ではBIMデータを活用したプレゼンテーションや施工シミュレーションが行われています。
また、製品開発の初期段階からCGによるイメージ検証を行うことで、開発コストやリードタイムの削減にもつながっています。
- 自動車・家電メーカーのプロモーション映像制作
- 建築設計事務所のBIM・CG連携プレゼンテーション
- 製品開発初期でのCGによるイメージ検証
- オンラインカタログ・ECサイトでの3Dビジュアル活用
まとめ

CADとCGは目的や得意分野が異なりますが、両者を連携させることで設計からビジュアル表現まで一貫したデータ活用が可能になります。正確な設計情報を基に高品質なCGを制作することで、製品開発やプロモーション、プレゼンテーションの質が大きく向上します。
今後も技術の進化とともに、CADとCGの連携はさらに重要性を増していくでしょう。本記事を参考に、目的や用途に応じて最適なツールやワークフローを選択し、ビジネスの現場で積極的に活用してみてください。
またCG制作にCADデータを活用するには、データ変換やモデリング補正などにノウハウが必要です。それにはCG制作のプロに依頼することで、より高品質な3DCGを制作できるでしょう。当社はCADデータを基にした3DCG制作を得意としており、製品画像からプロモーション動画、機能説明や取扱い説明用の画像・映像、AR/VRやWebGLへの展開など、目的に応じた様々なメディア向けのコンテンツ制作サービスを展開しています。
丁寧なヒアリングを通して、さまざまなニーズに対応したコンテンツ提案に動画撮影、編集まで一括で対応可能です。動画コンテンツの活用を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。