COLUMNコラム

デジタルアートとは?注目される理由や活用事例・今後の展望を解説

公開日: 2023年6月22日  

デジタルアートとは、デジタルデバイスを用いて制作されたアート作品のことです。NFT技術の登場により、デジタルアートのオリジナル性や所有権を確立できるようになり、新たな投資先としても注目を集めています。本記事では、デジタルアートとは何か、注目される理由や活用事例、将来性などを解説します。

デジタルアートとは?

デジタルアートとは、パソコンやタブレットなどのデジタルデバイスを使って制作されたアート作品のことです。デジタルデバイスで作られたものであれば、イラストや絵画に限らず、音楽やゲームといったさまざまな作品がデジタルアートに含まれます。

デジタルアートは、デジタルデバイスを用いてゼロから作られる場合と、画像や音源など既存の素材を加工して作られる場合、アナログで制作したものをスキャンしてデータ化する場合などさまざまです。

デジタルアートは種類が豊富で簡単に作れる

デジタルアートには、多くの種類があります。代表的なデジタルアートは、以下のとおりです。

  • デジタル絵画:アナログな絵画手法をデジタル上に応用して描かれた作品
  • デジタルイラストレーション:マウスやペンタブレットなど、デジタルツールで描かれたイラスト作品
  • プロジェクションマッピング:壁や建物などにCG等を立体的に投影するパフォーマンス作品
  • 電子音楽:デジタル楽器を用いて作られた音楽作品
  • デジタル写真:デジタルデバイスを用いて加工された写真作品
  • VFX(視覚効果):映像にCG等を合成・加工した映像作品

現在では、デジタルアートを制作するためのツールが普及しており、誰でも簡単にデジタルアートを制作できます。

デジタルアートの価値を高めたNFTアートとは

デジタルアートについて理解するためには、NFTへの理解が不可欠です。NFTとは「Non Fungible Token」のことで、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれます。NFTにはそれぞれ固有のIDが割り振られているため、版画のエディションナンバーのように同じアート作品でも、別のものとしてみなされます。このように、NFTを紐づけられた作品はオリジナルの存在とみなされるのが特徴です。

これまで、簡単に複製できてしまうデジタルアートは、価値が低いとみなされていました。しかし、NFT技術が登場したことにより、デジタルアートにオリジナル性を与えられるようになったのです。NFTを紐づけられたデジタルアートを所有していれば、作品の唯一の所有者であることを証明できます。

また、NFTの情報や取引の履歴はすべてブロックチェーンによって記録され、これまでの経緯をすべて追跡できるのもポイントです。

NFTの登場により、億単位の高値で取引されるデジタルアートも存在するなど、デジタルアートの価値は向上しています。

なぜデジタルアートが注目される?

デジタルアートの取引は2021年のはじめごろから活発化し、現在では大きな注目を集めています。デジタルアーティストであるBeepleの作品が約75億円で落札されたニュースは、記憶に新しいところでしょう。
ここでは、デジタルアートが人々を熱狂させている理由を詳しく解説します。

ビジネスとしても期待される

デジタル資産の将来性が注目されている現在、デジタルアートはビジネスとしても期待されています。

デジタルアートは、オンライン上のギャラリーで自由に鑑賞できるだけではなく、NFTを取り扱うマーケットプレイスで暗号資産を用いて売買することができます。アートに興味がある方が作品を楽しむだけではなく、投資目的での売買も活発化しています。

手軽に売買できる反面、アーティストの利益にならない転売を心配される方もいらっしゃるでしょう。しかし、NFTに「購入代金の一部をアーティストに支払う」というプログラムを組むことで、作品がアーティストの元を離れても、取引の度に売上の一部がアーティストに還元されます。

このように、NFTアートがビジネスにおいて大きな可能性を秘めている点が、デジタルアートが注目される理由の1つなのです。

所有権の確立

前述のとおり、NFT技術によってデジタルアートにオリジナル性を与えられるようになったのも大きな理由です。デジタルアートの所有権を確立できるようになり、アートとして所有する価値が生まれました。

従来は、デジタルアートはオリジナルであるかどうかを見分けられない場合が多く、デジタルアートを公開すると簡単に複製されてしまうリスクがあることから、アナログ作品に比べるとさほど所有の意義がないという課題がありました。

NFTアートが登場したことで所有権を確立でき、オリジナルであることを証明できます。そのため、現在ではデジタルアートの価値が注目されているのです。

著名アーティストの参入

最近では、著名なアーティストがデジタルアートに参入し、盛り上がりを見せています。2021年3月には、現代美術家や映画監督として活躍する村上隆氏が、「OpenSea」というNFTマーケットプレイスにNFTアートを出品しました。その後もNFTプロジェクトに積極的に参加し、NFTプロジェクトで宇宙に貢献したとして、インターネットの卓越性を表彰する「Webby Awards」で特別功労賞を受賞しています。

海外でも、さまざまな著名アーティストがNFTアートを制作したり、既存の作品にNFTを紐付けて展開したりと、デジタルアートはますます注目を集めています。

デジタルアートの価値とは?

デジタルアートは、NFTを紐づけられることにより、さまざまな価値を発揮します。NFTアートならではの価値は、NFTによって取引の履歴が残り、所有権を証明できる点にあります。最近では、デジタルアートのみならず、現物のアートについても真贋性を証明できるようになりました。

以下では、デジタルアートの価値について解説します。

取引の履歴が残る

NFTを紐づけたデジタルアートは、ブロックチェーンが持つトレーサビリティという特徴を利用しており、高い信頼性を誇ります。

デジタルアートの取引履歴はすべてブロックチェーンによって記録されます。そのため、デジタルアートの購入者は、販売者が本当に保有者であることを確認した上で、安心して取引できるわけです。制作者(販売者)にとっては、オリジナルであることを担保した上で販売できるため、著作権の保護につながる点がメリットといえるでしょう。

現物が証明される

前述のとおり、NFTはデジタル証明書のような役割を果たし、データの真贋性を担保できる技術です。最近ではNFTを活用して、物理的に存在する商品の真贋性を証明できるサービスも展開されています。商品の所有権をNFTとしてマーケットプレイスで販売し、購入者はそのNFTを購入して保有し、販売する仕組みです。

真贋判定を行い、本物であると証明されているアナログ作品の所有権をNFT化することで、透明性の高い取引が実現します。

デジタルアートの活用事例

ここでは、デジタルアートを活用している事例を3つご紹介します。

  • チームラボ
  • 美術館&美術市場
  • ユニクロUT

これらは、デジタルアートが持つ芸術としての価値を活かした事例です。デジタルアートを活用することで、子どものクリエイティビティを高めたり、多くの方が日常的に芸術に触れやすくなったりする機会を創出できます。

チームラボ

チームラボは、アーティストやCGアニメーターなどのスペシャリストからなる集団です。鮮やかで幻想的なプロジェクションマッピング作品を多く手がけています。また、子どもたちが描いた魚の絵をスキャンすると、その絵がデジタルの水槽を泳ぎ出す「お絵かき水族館」が話題になりました。

「お絵かき水族館」は泳いでいる魚に触るといっせいに逃げ出したり、エサ袋に触るとエサをあげられたりするインタラクティブな作品です。自由に絵を描き、そこに命が吹き込まれていく体験は、子どもたちの創造性や好奇心を高めてくれるでしょう。

参考:teamLab「お絵かき水族館 / Sketch Aquarium」

美術館&美術市場

フランスのパリでは、2018年にパリ初のデジタルアート美術館「アトリエ・デ・リュミエール」が誕生しました。世界各地に散らばるクリムトの作品をデジタル化し、プロジェクションマッピングとして投影することで、彼の作品を一挙に鑑賞できるようにしました。音楽や投影方法にもこだわり、新たな楽しみ方を提供しているのもポイントです。

さらに、カフェで一息つきながら現代デジタルアートの展示を楽しめるようになっており、老若男女問わず芸術を堪能できます。

参考:PARIS mag「パリ初のデジタルアートの美術館『アトリエ・デ・リュミエール』が誕生!」

ユニクロUT 

ユニクロは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)とパートナーシップを締結しており、アートをデジタル化することで、アートを身近に感じられる機会を提供しています。その一環として、モネやゴッホなどの作品をプリントしたTシャツを販売しました。グラフィックTシャツブランド「UT」とMoMAのコラボを通して、多くの方が日常的にアートを楽しめる機会を創出している事例です。

他にもユニクロは、アートに関するさまざまなデジタルコンテンツやプログラムを実施しており、2022年2月にはMoMAとのパートナーシップを更新しています。

参考:ユニクロ「MoMAとのパートナーシップにより生まれたコレクション 近代美術の巨匠たちの作品を日常に 「MoMA アート・アイコンズ UT」2022年2月7日(月)より発売」

参考:ユニクロ「ニューヨーク近代美術館とのパートナーシップを更新」

デジタルアートの注意点、課題

デジタルアートには、以下のような注意点や課題があります。

1.ディスプレイとプリントでは色の見え方が異なる
デジタルアートを制作する際の注意点です。デジタルアートは、ディスプレイ上とプリントした時とでは色の見え方が異なります。デバイスによる発色の違いは想定しておかなくてはなりません。

2.デジタルアートの制作者とNFT所有者が異なる
デジタルアートを購入する際の注意点です。NFTによって作品の所有権を証明できますが、制作者がNFT化する前に誰かがNFT化して販売した場合、実際の制作者とNFTの所有者が異なってしまいます。インターネットにアップされているイラストのデータを無断でコピーしてNFT化すれば、第三者がその作品の制作者であると偽って勝手に販売できてしまうのです。

個人でできる対策としては、信頼できるマーケットプレイスで取引することが挙げられます。デジタルアートの課題として、盗品や複製に備えたシステム強化や法的整備が不可欠です。

3.NFTアートは将来価格が暴落するリスクがある
NFTが将来的に抱えるリスクについてです。NFTにより取引の安全性が高まったデジタルアート(NFTアート)は、新たな投資対象として注目されています。今後も投資先としてのアート需要は高まる見込みです。特に日本では、新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間が増えたことにより、投資対象になるだけではなく自宅で楽しめるという点から、NFTアート投資に注目する投資家が増えています。

現在、多くのNFT関連コンテンツがバブル状態にあるといっても過言ではありません。アートは、本来作品が持つ芸術的な価値をもって取引されますが、NFTアートが実際の価値以上の価格で取引されている場合も多いのが現状です。そのため、今後価格が暴落して大きな損失を被ったり、NFTアートが衰退してしまったりするリスクもあります。

NFTアートを保有する場合は、アートが持つ本来の価値を冷静に見極め、適正な取引であることを確認することが不可欠です。

デジタルアートの展望

最後に、デジタルアートの可能性を示す2つの事例をご紹介します。

⚫︎愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」の事例
愛媛県は、イメージアップキャラクター「みきゃん」をテーマとするデジタルアートをNFT化して販売し、そこで得られた収益を制作者や関係者に還元する、という仕組みづくりを進めています。実証実験では、Web3.0の世界でデジタルアートがどのように流通するか、NFTアートの購入者が愛媛県に対して抱くイメージがどのように変化するか、などを検証する予定です。デジタルアートとWeb3.0技術を活用し、地域活性化や新たなクリエイターエコノミーの形成を目指しています。

⚫︎地域が誇る文化財のデジタル化に取り組むNTT東日本の事例
NTT東日本は、絵画や彫刻などの価値ある文化財を高精細なデジタルデータとして保管し、経年劣化や災害といったリスクから文化財を守る取り組みを進めています。さらに、デジタルデータを使った美術展を開催したり、新たな鑑賞方法を提供したりすることで、地域活性化に貢献する方針です。

このように、デジタルアートは、地域活性化や文化芸術の保全、発展につながる可能性を秘めています。投資先として注目されているデジタルアートですが、本来の価値は芸術作品としてのものであることを忘れてはいけません。

参考:愛媛県「Web3.0技術とデジタルアートを活用した地域活性化実証実験の実施について」

参考:NTT東日本「地域の価値ある文化芸術のデジタル化と活用を通じた地域活性化の実現」

まとめ

今回は、デジタルアートとは何か、注目される理由や価値、活用事例などをご紹介しました。デジタルデバイスで制作したデジタルアートは、デジタルならではのメリットを活かして、芸術界の可能性を拡大しています。さらに、NFT技術の登場でオリジナル性を証明できるようになった結果、新たな投資先としても注目されているのがポイントです。

デジタルアートに興味を抱いた方は、一度マーケットプレイスを覗いてみてはいかがでしょうか。

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