
文部科学省によるGIGAスクール構想のもと、これまで学校教育ではICT環境整備とその活用が大きく進んできました。またICT教育の一環として、動画教材の利用やオンライン授業など動画活用への注目も高まっています。この記事では教育現場で動画を使うメリットや活用事例、プロ視点からの制作ポイントをご紹介します。
教育業界で動画が注目されている理由
動画が解消する「不便さ」と「問題」
学習塾や予備校では地理的な制約なく質の高い授業を提供するために、以前から授業動画を使ったeラーニングを展開してきました。また、学校教育においても、新型コロナウイルスの流行下での一斉休校措置の際、対面授業が困難な状況を解消するためにオンライン授業が導入され、動画が重要な役割を果たしました。
これらは、時間や場所の制約、または緊急時の学習機会の確保といった不便さや問題を解消する手段として、動画が有効であることを示しています。
「便利」から「学力向上」への期待
動画の利用は、単にこれらの問題解消に「便利」であるという段階から、今後は学習効果を高め、生徒の「学力向上」に直接的に貢献する教材としてさらに期待が高まっています。これは、動画が持つ以下の特性によるものです。
- 視覚・聴覚への訴求力:複雑な概念や実験、現象などを、文字や静止画では伝えきれない臨場感と情報量で伝えることができます。これにより、深い理解と記憶定着を促します。
- 個別最適化:生徒は自分の理解度やペースに合わせて、動画を繰り返し視聴したり、一時停止したりすることが可能です。これにより、画一的な授業では生まれがちな理解の差を埋め、個別最適な学習を実現します。
- モチベーション維持:アニメーションや実写映像などの多様な表現手法は、学習への興味・関心を高め、学習意欲の維持に貢献します。
このように、動画は不便さを解消するツールから、学習効果そのものを高めるための強力な手段へと進化しており、教育現場での活用が今後ますます進むと予想されます。

GIGAスクール構想は、端末配布から「活用」へ
2019年に始まったGIGAスクール構想は、小中学生に1人1台の端末を配ることで大きな話題となりました。現在は「NEXT GIGA(第2期)」と呼ばれるフェーズに突入しています。これまでの「端末を配る」段階から、次は「どう使いこなすか」に焦点が移っているのが大きな特徴です。
具体的には、2024年度から端末の更新費用が国から補助されるようになり、より高性能なPCへの買い替えが進んでいます。また、デジタル教科書と動画の連携も強化されており、ネット環境の整備もさらに加速しています。教育のデジタル化は、もはや一時的な流行ではなく、公教育のインフラとして完全に定着しようとしています。
文部科学省:教育の情報化・GIGAスクール構想の推進
従来型の授業と動画教育の違い
| 項 目 | 従来型の授業(対面・紙) | 動画を活用した教育 |
| 情報の鮮度 | 教科書の改訂を待つ必要がある | 常に最新の情報を反映しやすい |
| 学習のペース | クラス全体の進度に合わせる | 自分の理解度で一時停止・再生が可能 |
| 理解のしやすさ | 文字や図解からの想像力が必要 | 映像と音で直感的に理解できる |
| 振り返り | ノートの記録が頼りになる | 何度でも同じクオリティで見直せる |
| 教員の役割 | 知識を一方的に伝達する時間が長い | 生徒のフォローや議論の促進に注力できる |
教える側の革新:授業準備の効率化と「反転学習」の実現
動画教育は、教える側の先生たちにとって革命的な変化をもたらしています。これまでは同じ内容の解説をクラスごとに繰り返していましたが、解説部分を動画に置き換えることで、授業時間を「ディスカッション」や「個別指導」に充てられるようになりました。
これはいわゆる「反転学習」と呼ばれる手法で、事前に動画で予習し、教室ではアウトプットを中心に行うスタイルです。また、全国の優れた講師の授業動画を活用すれば、地域による教育格差を埋めることも可能です。先生が「知識の伝達者」から「学びの伴走者」へと役割を変える上で、動画は非常に効率的なパートナーとなっています。
導入の課題とこれから:通信環境とデジタル・リテラシー
動画教育には、解決すべき課題も残っています。最も大きなハードルは、学校や家庭の通信環境です。高画質な動画をクラス全員が一斉に視聴するとネットワークが重くなり、安定したWi-Fi環境の整備が急務となっています。また、動画に頼りすぎて思考力が低下しないよう、適切な指導も求められます。さらに、情報の真偽を見極める「メディアリテラシー」を生徒自身が身につけることも重要です。これらの課題を克服した先には、AIが個々の弱点を分析して最適な動画をリコメンドしてくれるような、さらにパーソナライズされた学びの未来が待っているはずです。
動画コンテンツの普及と高まる需要
YouTubeで検索すると、多彩な教育チャンネルが用意されています。また、授業や家庭で活用できる動画コンテンツをWebサイト上で無料で提供している国や民間企業の取り組みもあります。
経済産業省:「未来の教室」事業
経済産業省:STEAMライブラリー(note)
NHK ONE:NHK for School
チエル株式会社:eTeachers GIGA School
このように学校教育での活用を前提とした質の高い動画や教材となるコンテンツを、今はインターネットで簡単に閲覧、ダウンロードすることができます。
一方で、学校の方針や授業内容、生徒の年齢や属性にぴったりと合ったコンテンツが見つからないなど、動画活用への意識が高まれば高まるほど、従来のコンテンツでは物足りなさを感じる場合もあるでしょう。YouTubeやSNSで動画慣れしている生徒を飽きさせないためには、動画のクオリティも求められます。
効果的な教育動画とは?
教育動画にとって大切なことは、教材として分かりやすいか、学習効果があるかです。
効果的な動画とは何でしょう。
- 学習のポイントが整理されていて、伝えたい内容が明確である
- イメージしやすく、生徒が興味を持って見ることができる
「ただ見るだけ」に終わらず、学習の理解が深まるもの、実際の授業やテストと組み合わせ学習効果が感じられるものでなければなりません。
教育業界における動画の活用事例
教育業界での動画の活用は教材としてだけではありません。教育現場で進む活用事例をご紹介します。

学校紹介・オープンキャンパス動画
受験生や保護者が志望校を選ぶ際、Web上の動画コンテンツは決定的な判断材料になります。キャンパスのドローン空撮や、在校生の生き生きとした表情を捉えたインタビューなどは、学校の雰囲気や入学後の生活のイメージが膨らみ、印象にも残りやすいです。
また、理事長や学校長のあいさつは動画の方が声や表情とともに伝えたい想いをダイレクトに届けることができ、よりメッセージ性が高まり学校の「ブランドイメージ」を向上させます。遠方の入学希望者へ向けたWebオープンキャンパスとしても有効です。
研究内容の公開
大学や専門機関では、研究内容を動画で公開する場合もあります。専門性が高い内容を論文で読むのは、ともすると素人相手には敬遠されがちです。しかし動画であれば、ニュースや教育番組のように興味を持って見てもらうことができます。テロップを使ったり、ナレーションを別に収録したりすることで多言語化も可能です。
教育現場での身近な例としては、東京都教育委員会が配信している「とうきょうの情報教育」というYouTubeチャンネルがあります。まさに東京の情報教育やICTの活用事例などを、実際の授業動画などを用いて情報発信しています。
東京都教育委員会:とうきょうの情報教育
授業動画で学び直し
学習塾や予備校、資格スクールなどでは、すでに映像コンテンツとして授業動画の活用が進んでいます。生徒たちはどこにいても同じ動画を視聴できるので、教師の質や環境による学習の偏りをなくすことができ、教育の均質化に役立っています。いつでも、どこでも、繰り返し見ることができるので、休んだ日の授業や分からない部分の学び直し、予・復習にと、自分のペースで学習できるのが大きなメリットです。
〈授業動画の一例〉
株式会社イー・ラーニング研究所:スクールTV
小中学生向けの動画学習サービス。単元ごとの授業が無料で視聴できる動画もあります。
オンライン授業で補習
オンライン授業は、コロナ禍で一般にも広く浸透しました。今ではほとんどが対面授業に戻りましたが、学校にはさまざまな理由で登校が難しい生徒もいます。インターネット環境とパソコンやタブレット端末さえあれば、教室でなくても授業が受けられるようになると、そのような生徒も授業に遅れることなく、同じように教育の機会を享受することができます。
教育動画の「質」「効果」を左右する3つの制作ポイント
今は無料の動画編集ソフトもあり、先生自ら動画を作ることも可能です。より効果的な動画を作るために押さえるべきポイントを紹介します。

1. 「飽きさせない」シナリオ構成
授業動画で最も懸念されるのは、単調な講義内容による離脱です。これを防ぐには、テレビ番組のような「構成力」が必要になります。冒頭で学習のゴール(結論)を提示し、途中に問いかけを挟み、生徒自身が考えたり、調べたり、周りの生徒と話し合ったりする時間を作るなど、視聴維持率を高める工夫が求められます。これは映像制作における「脚本術」の領域です。
2. 視覚情報(インフォグラフィックス・CG)の活用
動画の場合、先生の顔、板書、説明(音声)だけでは飽きてしまいます。そこで、口頭説明だけでは伝わりにくい「化学反応のプロセス」や「歴史的背景の相関図」などは、図解やアニメーション(モーショングラフィックス)を用いると理解度が飛躍的に向上します。特に、肉眼で見えない現象を可視化する3DCGは、理数系科目の教材として強力な武器になります。
3. 音声と照明のクオリティ
実は映像以上に重要なのが「音」です。聞き取りづらい音声は学習者のストレスとなり、集中力が途切れます。クリアな音声収録と、教師の表情を明るく見せる適切なライティングは、信頼感のある教材作りには不可欠な要素です。さらに、テロップを活用して学習のポイントを強調したりと表現を使い分け、関心の薄い生徒にも飽きさせない工夫をしましょう。
教育業界の動画を制作する際の注意点
実際に動画を作り活用していくとなると、その前にいくつか考えなければいけない問題があります。

制作設備・環境を整える
動画を制作するには、最低限必要な道具がいくつかあります。パソコン(編集ソフト)、カメラ、三脚、マイク、照明です。カメラは、画面の切り替えなどの演出を加えたい時や、レンズの口径や画角がイメージと合わない時の予備として、必要に応じて複数のカメラを用意し、アングルを変えて撮影します。カメラを固定する三脚も必要です。
マイクは、特に授業動画には必須です。声の聞き取りやすさが重要な要素になるので、パソコン内蔵ではなく、取り付けできる外部マイクを用意しましょう。画質の良さは、明るさひとつで大きく変わります。できれば照明も用意しておきましょう。
セキュリティやプライバシーへの配慮
実際の授業を撮影して配信する場合などは、映り込んでいる生徒や学校関係者のプライバシーの問題もあります。外部の人が視聴できないようにアクセス制限をかけることが重要です。YouTubeの限定公開もありますが、URLが流出すれば誰でも見ることができてしまいます。セキュリティ対策を講じた専用システムを利用するのが最も安心できるでしょう。
教員のICTに関する理解の向上
このように動画を撮影、編集して、システム上にアップするにはパソコンの基本操作はもちろん、編集ソフトの操作、それと、セキュリティやプライバシーへの高い意識が必要不可欠となります。適任者がいなければ、人材の育成、確保が必要となります。
動画を制作する2つのやり方
動画を制作する場合には2つのパターンが考えられます。自分たちで作る場合と、プロの制作会社に依頼する場合です。それぞれのメリット、デメリットをご紹介します。

現場の先生自ら制作する
自主制作の一番のメリットはコストを抑えられることです。制作のノウハウさえ定着すれば、先生たちで修正ができたり、頻繁に新しい動画をアップできたりするのも強みです。学校やクラスの雰囲気、先生の人柄が滲み出る、そんな動画も手作りならではの魅力。現場の教員による手作り感は、視聴者(生徒)の関心も惹くでしょう。
デメリットとしては、膨大な時間がかかることが挙げられます。1本の動画が完成するまでには、企画、シナリオ作り、撮影、編集、スライド作り、ナレーション収録などたくさんの工程があります。慣れるまでは想定よりも多くの時間がかかってしまうかもしれません。
動画制作のプロに依頼する
動画を作る人材がいない、時間がない、またクオリティの高い動画を求めるなら、やはり動画制作のプロに依頼するのがおすすめです。制作会社に依頼する場合はコストがかかりますが、撮影場所や撮影に要するスタッフの数、機材のレベルや編集のこだわりなどによって費用は大きく変動します。まずは、動画の目的や予算などを相談してみると良いでしょう。
まとめ

GIGAスクール構想「NEXT GIGA」において、教育現場での動画活用が「どう使いこなすか」というフェーズに移行していることを踏まえ、動画教育の具体的なメリット、活用事例、そして効果的な制作ポイントを解説しました。
動画は、映像と音で生徒の理解を深め、自分のペースで学び直しを可能にするだけでなく、教員にとっては反転学習を実現し、個別指導や議論の時間を生み出す「学びの伴走者」への役割変革を促します。学校紹介からオンライン授業まで多岐にわたる活用が進む中で、「シナリオの工夫」「表現方法の活用」「情報の短尺化」といった制作のポイントを押さえることが、学習効果を最大化する鍵となります。
通信環境やセキュリティ、教員のICT理解向上などの課題克服も不可欠ですが、動画活用は教育の質の向上と均質化に貢献する強力なインフラとなりつつあります。
弊社ゼネラルアサヒは、製造業やBtoB企業を中心に、会社紹介や製品プロモーション、インタビュー動画などあらゆるジャンルの動画制作の実績があります。学習効果の高い動画制作にお悩みであれば、お気軽にご相談・お問い合わせください。
