「また同じ問い合わせが来た…」「サポート担当者が説明に追われて本来の業務が進まない…」
製造業のアフターサービス部門で、こんな声が聞こえてきませんか?製品の操作方法やトラブル対処について、同じ内容の問い合わせが繰り返し寄せられる状況は、多くの製造業企業が抱える共通の悩みです。
電話やメールで一件一件対応していては、サポートスタッフの負担は増える一方。しかも、言葉だけの説明では顧客に正確に伝わりにくく、結局何度もやり取りが発生してしまうことも少なくありません。
そこで注目されているのが「トラブルシューティング動画」の活用です。製品の不具合対応や操作手順を動画で分かりやすく解説することで、サポート業務の効率化と顧客満足度の向上を同時に実現できます。
本記事では、製造業における製品トラブルシューティング動画の制作ポイントから活用方法まで、実践的なノウハウをお伝えします。
製造業でトラブルシューティング動画が求められる背景

サポート業務の課題が深刻化している
製造業のアフターサービス部門は、年々厳しい状況に置かれています。製品の高機能化・複雑化に伴い、顧客からの問い合わせ内容も多様化。一方で、人手不足やコスト削減の要請から、サポート体制を大幅に強化することは難しいのが現実です。
2025年版ものづくり白書が示す通り、製造業の現場における人材確保は極めて深刻な局面を迎えています。ここで見落としてはならないのは、サービス部門に十分な人員を補填する余裕が、もはやどの企業にも残されていないという現実です。出典:経済産業省「2025年版ものづくり白書(概要)」
サービス部門への人材投資が後回しにされがちな今だからこそ、属人的な対応を脱却し、動画コンテンツによって『説明の自動化』を図ることが、企業の稼ぐ力を維持する唯一の解決策となります。
顧客側のニーズも変化している
興味深いことに、顧客側のニーズも変化しています。「電話で問い合わせるより、自分で調べて解決したい」という層が増えているのです。
特にデジタルネイティブ世代が現場の中心になりつつある今、テキストマニュアルよりも動画コンテンツを好む傾向は顕著です。YouTubeで製品の使い方を検索するのは、もはや一般的な行動となっています。
つまり、トラブルシューティング動画の整備は、企業側のコスト削減ニーズと顧客側のセルフサービスニーズ、双方を満たす施策といえるでしょう。
動画だからこそ伝わる情報がある
製品のトラブル対応において、動画が持つ優位性は明らかです。
テキストマニュアルで「赤いランプが点滅したら、背面のリセットボタンを3秒間長押ししてください」と書かれていても、「赤いランプ」がどれか、「リセットボタン」がどこにあるか、分からないことがあります。
動画であれば、実際の製品を映しながら「このランプです」「このボタンを、こうやって押します」と示せます。言葉では伝わりにくい「力加減」や「タイミング」も、視覚的に理解してもらえるのです。
効果的なトラブルシューティング動画の種類と特徴

症状別トラブル対応動画
最も基本的かつ重要なのが、症状別に整理されたトラブル対応動画です。
「電源が入らない」「異音がする」「エラーコードが表示された」など、顧客が直面している症状をタイトルにすることで、必要な動画をすぐに見つけてもらえます。
制作のポイントは、1動画1症状に絞ること。複数の症状をまとめてしまうと、顧客は自分に関係ない部分まで視聴しなければならず、離脱につながります。一般的に、トラブルシューティング動画は2〜5分程度が視聴されやすいとされています。
予防保全・メンテナンス動画
トラブルを未然に防ぐためのメンテナンス動画も、サポート効率化に大きく貢献します。
定期的な清掃方法、消耗品の交換時期と手順、点検ポイントなどを動画化しておくことで、「壊れてから問い合わせ」ではなく「壊れる前に対処」という流れを作れます。
結果として、重大なトラブルの発生頻度が下がり、サポート部門の負荷軽減につながります。
初期設定・セットアップ動画
意外と問い合わせが多いのが、製品導入時の初期設定です。「マニュアル通りにやったのに動かない」というケースの多くは、実は手順の微妙な見落としが原因だったりします。
動画であれば、設定画面の遷移を実際に見せながら説明できるため、「この画面が出たら、ここをクリック」と迷いなく進めてもらえます。
3DCG・アニメーションを活用した動画
製品の内部構造や、分解しないと見えない部分のトラブル対応には、3DCGやアニメーションが効果的です。
実機を分解して撮影するのは大変ですし、危険を伴う場合もあります。3DCGであれば、断面図を見せたり、内部の動きを可視化したり、実写では不可能な表現が可能になります。
製造業向けの3DCG制作実績を持つ制作会社であれば、CADデータを活用した効率的な制作も期待できます。映像・CGの制作実績を参考に、自社製品との相性を検討してみるのも良いでしょう。
制作前に押さえるべき企画・設計のポイント

問い合わせデータの分析から始める
効果的なトラブルシューティング動画を制作するには、まず「どんな問い合わせが多いのか」を把握することが出発点です。
過去の問い合わせ履歴を分析し、頻出する質問をリストアップしましょう。コールセンターの対応記録、メール問い合わせの内容、サービスエンジニアからのフィードバックなど、複数のソースから情報を集めることで、優先度の高いテーマが見えてきます。
「パレートの法則」がここでも当てはまることが多く、問い合わせ全体の大部分は、比較的少数のテーマに集中している傾向があります。まずはその頻出テーマから動画化を進めるのが効率的です。
ターゲット視聴者を明確にする
同じ製品でも、視聴者によって求める情報の深さが異なります。
エンドユーザー向けであれば、専門用語を避け、基本的な操作から丁寧に説明する必要があります。一方、販売店やサービス代理店向けであれば、より技術的な内容を効率よく伝えることが求められるでしょう。
制作する動画シリーズ全体で、ターゲットを統一するのか、視聴者層別に分けて制作するのか、最初に方針を決めておくことが重要です。
動画の構成テンプレートを作る
複数の動画を制作する場合、構成のテンプレートを作っておくと効率的です。
たとえば、以下のような流れを基本形として設計します。
- 症状の確認(どんな状態か)
- 考えられる原因(なぜ起きているか)
- 対処手順(どうすれば解決するか)
- 解決後の確認(正常に戻ったか)
- 解決しない場合の案内(サポート連絡先など)
この構成を統一することで、視聴者は動画の流れを予測できるようになり、必要な情報にたどり着きやすくなります。
検索されやすいタイトル・説明文を設計する
せっかく良い動画を作っても、顧客に見つけてもらえなければ意味がありません。
タイトルには、顧客が検索しそうなキーワードを含めましょう。製品名、症状、エラーコードなど、具体的な言葉を使うことがポイントです。
また、動画の説明文やタグにも関連キーワードを設定し、社内の検索システムや動画プラットフォームで見つけやすくする工夫が必要です。
動画制作の具体的な進め方と注意点

台本・絵コンテの作成
実際の撮影・制作に入る前に、台本と絵コンテを作成します。
台本では、ナレーション原稿だけでなく、画面に表示するテロップや図解の内容も明記しておきましょう。製品の専門用語は、サポート部門や技術部門にチェックしてもらい、正確性を担保することが重要です。
絵コンテは、詳細なものでなくても構いません。どのカットで何を映すか、大まかな構成が分かる程度で十分です。ただし、製品の操作手順を説明する場合は、手元のアップ、画面のアップ、全体像など、必要なカットを漏れなくリストアップしておきましょう。
撮影・収録のポイント
製品のトラブルシューティング動画では、「何をしているか明確に見える」ことが最優先です。
照明は十分に確保し、製品の細部がはっきり映るようにします。手元の操作を撮影する際は、作業の邪魔にならない位置からのアングルを工夫しましょう。
音声も重要です。工場内やオフィスでの撮影は、空調音や機械音などのノイズが入りやすいため、ナレーションは別途スタジオで収録するか、静かな環境を確保することをお勧めします。
編集・仕上げで差がつく
撮影した素材を編集し、完成度を高める段階です。
テロップは、ナレーションの内容を補完する程度に留めましょう。画面いっぱいに文字を詰め込むと、かえって見づらくなります。操作の重要なポイントでは、矢印や丸囲みなどで注目箇所を示すと効果的です。
操作手順の動画では、実際の操作スピードのままだと速すぎる場合があります。適宜スロー再生を挟んだり、一時停止して説明を加えたりする編集が有効です。
3DCGを活用する場合は、実写との合成や、アニメーションのタイミング調整など、専門的なスキルが求められます。社内にリソースがない場合は、製造業向けの映像制作に強い外部パートナーへの相談も選択肢となります。
多言語対応・アクセシビリティへの配慮
グローバルに製品を展開している企業では、多言語対応も検討課題です。
ナレーションの多言語化はコストがかかりますが、テロップの翻訳だけでも対応範囲は広がります。また、字幕を付けることで、音声を出せない環境での視聴や、聴覚障害のある方への配慮にもなります。
運用・活用で効果を最大化する方法
効果的な公開・配信プラットフォームの選定
制作した動画をどこで公開するかは、活用効果に大きく影響します。
自社Webサイトのサポートページに掲載するのは基本として、YouTubeなどの動画プラットフォームへの公開も検討しましょう。検索エンジンからの流入が見込めるほか、顧客が普段使い慣れているプラットフォームで視聴できる利便性があります。
BtoB製品の場合、顧客専用ポータルサイトでの限定公開という選択肢もあります。製品のシリアル番号などで認証し、該当製品の動画のみ閲覧可能にする仕組みです。
サポートフローへの組み込み
動画を公開しただけでは、なかなか活用されません。サポート業務のフローに組み込む工夫が必要です。
たとえば、電話問い合わせがあった際に「まず動画をご覧いただけますか」と案内する、メールでの問い合わせに対して該当動画のリンクを返信テンプレートに含める、といった運用ルールを設定します。
また、製品に同梱するQRコードから動画にアクセスできるようにすれば、顧客は困った時にすぐ動画を参照できます。
効果測定と継続的な改善
動画の効果を把握し、継続的に改善するサイクルを回すことが重要です。
視聴回数、視聴完了率、どの時点で離脱しているか、などのデータを分析しましょう。視聴完了率が低い動画は、長すぎる、冒頭が分かりにくい、などの問題がある可能性があります。
同時に、問い合わせ件数の変化も追跡します。動画公開後に該当テーマの問い合わせが減少していれば、動画が効果を発揮している証拠です。逆に減らない場合は、動画の内容や案内方法を見直す必要があるかもしれません。
動画コンテンツの更新・拡充
製品のモデルチェンジやファームウェアアップデートに伴い、動画の内容も更新が必要になります。
制作時点で、将来の更新を見越した構成にしておくと効率的です。製品全体を映すカットと、操作部分のクローズアップを分けて収録しておけば、操作画面だけ変わった場合に部分的な差し替えで対応できます。
継続的にコンテンツを拡充していくことで、サポート動画ライブラリとしての価値が高まり、顧客満足度の向上と問い合わせ削減の効果も蓄積されていきます。
動画制作や3DCGを活用したコンテンツ拡充について、進め方にお悩みの場合は、専門家へのご相談・お問い合わせも検討してみてください。
まとめ
製品トラブルシューティング動画は、製造業のアフターサービスを効率化し、顧客満足度を高める有効な施策です。
押さえておきたいポイントを整理します。
- 問い合わせデータを分析し、頻出テーマから優先的に動画化する
- 1動画1症状を基本とし、2〜5分程度のコンパクトな構成を目指す
- ターゲット視聴者に合わせた内容・表現レベルを設定する
- 検索されやすいタイトル・説明文で、見つけてもらいやすくする
- サポートフローに組み込み、顧客が自然に動画を参照する仕組みを作る
- 効果測定を行い、継続的に改善・拡充を進める
動画制作には一定の投資が必要ですが、一度作れば繰り返し活用でき、サポートコストの削減効果は長期にわたって続きます。
まずは最も問い合わせの多いテーマから、試験的に1本制作してみてはいかがでしょうか。その効果を実感できれば、本格的な展開への道筋も見えてくるはずです。
