
動画を作る前に絵コンテを準備するのとしないのでは、その後の進行や仕上がりに大きな違いが出てしまいます。動画制作において「絵コンテ」は非常に重要な工程で、動画のクオリティを左右するといっても過言ではありません。
この記事では、初心者向けに絵コンテを作る目的やくわしい制作手順を解説します。絵コンテ作りのポイントを押さえることで、どのような動画を撮影したいのかといったイメージをスタッフと共有しやすくなります。ぜひこの機会に覚えて、動画制作にチャレンジしてみましょう。
絵コンテとは?

・役割
絵コンテとは、映画やCM、YouTube動画、アニメなどの動画コンテンツを制作する際に、それぞれのシーンやカットの内容を視覚的にまとめた「設計図」のようなものです。絵コンテには、登場人物やキャラクターの動き、背景とのバランス、セリフやナレーション、そして場面の展開やカットごとのタイミングなど、映像制作に必要な情報が詳細に描かれています。そのため、絵コンテは「映像制作の指示書」や「構成台本」ともいえる存在です。
・目的
「絵コンテなんて必要なの?」と思う方がいるかもしれませんが、絵コンテを作ることで以下のようなメリットを享受できます。
【イメージの共有】制作スタッフ全員が作品の流れや雰囲気、演出意図を共通認識できるようになります。
【撮影・編集の効率化】必要なカットや撮影順序が明確になるため、現場や編集作業がスムーズになります。
【ミスの防止】撮り忘れや、アングル違いなどのミスやトラブルを防げます。
【クライアントへの確認】完成イメージを事前に伝え、意見や要望をもらいやすくなります。
絵コンテがあることで、動画制作に関わるスタッフに対して自分がどのような動画を作ろうと思っているのか伝えやすくなります。また、撮影前に動画全体の構成を把握しやすくなるからこそ、どのような順序で撮影していくかなど現場での準備や手配がわかりやすくなり、効率良くスムーズな撮影をすることができます。
トラブルやクライアントとの齟齬が発生しないようにするためにも、絵コンテを作成して動画制作に臨みましょう。
絵コンテを作る前に

絵コンテをいきなり作るのは、おすすめできません。作る前にしっかりと準備することで、質の高い絵コンテを作ることができます。
動画の目的、目標を明確にする
絵コンテを作る際には、動画の目的や目標をはっきりさせておく必要があります。目的や目標があいまいだと、どのような絵コンテを作れば良いのかわからず、その状態で作っても相手に伝わらない絵コンテとなってしまいます。
そもそも絵コンテは、絵の上手さよりも「どこに何があるか」や「場面がどう展開するか」といった必要な情報を伝えることが重要です。それらを伝えるためには、動画を作る目的や見てもらった上での目標などを明確にしておく必要があります。また、認知拡大なのか、ブランディングなのか、集客や商品購入なのかのゴールを設定することも大切です。そのことから、いきなり絵コンテを作るのではなく、まずは目的や目標が何なのかはっきりさせることから始めてみましょう。
配信媒体を決定(または想定)する
例えば、動画はYouTubeやTwitter、デジタルサイネージなどさまざまな媒体で配信できます。配信先によって最適なストーリーや再生時間などが異なるため、配信媒体を決めておきましょう。
媒体によっては、向いている世界観も異なります。そのことも踏まえた上で、絵コンテを作ることが重要です。YouTube広告の場合、ナレーションの速度や場面展開を速くしてテンポ良い動画にすることで、見てもらいやすくなるでしょう。
動画を見るターゲット層を設定する
絵コンテは配信媒体だけではなく、ターゲット層の設定も重要です。ターゲットによって、訴求するポイントや伝え方なども異なります。ターゲットがはっきりしていれば、メッセージ性の強い動画にしやすくなるため、絵コンテを作る前にターゲットを設定しましょう。
ターゲットを決める際には年齢や性別だけではなく、年収や家族構成、生活スタイルや価値観なども設定することにより、絵コンテの内容が明確になり作りやすくなります。
絵コンテを作るポイント

ポイントを押さえることは、相手に伝わりやすい質の高い絵コンテにつながります。初めて絵コンテを描くのであれば、ぜひこの項目でどのようなポイントを踏まえて取り組めば良いのかチェックしておきましょう。
他のコンテンツを参考にする
絵コンテを描く際には、まず自分が目指すジャンルや表現に近い、質の高い映像作品を積極的に参考にすることが重要です。プロの映像作家や動画クリエイターの作品をじっくり観察し、構図やカット割り、カメラワーク、ライティング、色使い、キャラクターや被写体の動きといった細かな部分まで分析しましょう。
そうした観察を通じて、自分の絵コンテに活かせる表現の引き出しが増え、表現力が磨かれます。また、何気なく使われている演出や構成には必ず意味や意図が隠されていることが多いため、なぜそのシーンが印象的なのか、どういう工夫がされているのかを考察することも非常に大切です。良い作品に学び、自分らしい発想をプラスした絵コンテづくりに取り組みましょう。
実際に撮影する動画と同じ縦横比で作成する
絵コンテを描く際には、動画と同じアスペクト比で作ることが大切です。その理由は、画面のサイズによって撮影時の構図やカメラワーク等の演出が変わることが挙げられます。
動画を配信する媒体によって、縦横の比率は異なります。例を挙げると、テレビやYouTube推奨のアスペクト比は16:9ですが、Instagramは1:1です。そのため画面サイズを確認せずいきなり描き始めるのではなく、実際に使われる動画のアスペクト比が何なのか先にチェックするようにしましょう。
第三者が見てもわかるように具体的に描く
絵コンテは「何となく」描くのではなく、場所や被写体と背景の構図、衣装やセリフ、顔の向き、動く方向などを具体的に描くことが大切です。構図や演出、画面展開を描くことで、どのような動画になるのか把握しやすくなります。
「絵が下手だから具体的に描くのはちょっと難しい……」と思う方もいるかもしれませんが、イメージさえできていれば、生成AIを活用して絵を作ってみるのもいいでしょう。具体的にどのような動画にするのか相手に伝わるような絵コンテであれば問題ありません。
メッセージを詰め込みすぎない
絵コンテは具体的に描く必要があるとはいっても、メッセージを詰め込みすぎるのはおすすめできません。詰め込みすぎると視聴者に何がいいたいのか、伝わらない動画になってしまう恐れがあります。
例えば30秒前後の動画ならば、メッセージは1〜2つに絞ると良いでしょう。90〜120秒の動画なら、3つほどのメッセージで十分です。伝えたいメッセージを絞ることで、効率よく絵コンテの構成を決めやすくなるでしょう。
セリフやナレーションも具体的に
絵コンテを作成する際には、セリフやナレーションも「雰囲気」や「大まかな内容」ではなく、できるだけ具体的かつ詳細に記載することが求められます。シーンごとに実際に使う言葉を書き出し、必要があれば話し言葉や登場人物の感情表現にも注意しましょう。ナレーションにも映像に合わせたリズムや間を意識して盛り込むことで、よりリアリティのある設計図になります。
具体的なセリフやナレーションは、撮影現場や編集の際に迷いが出にくく、出演者やスタッフへの伝達もスムーズです。細かなニュアンスが伝わることで、完成した映像のクオリティや一体感を高める大きな助けとなります。後からの修正も容易になるため、計画的に詳細を書いていきましょう。
全体の流れをみる
絵コンテの作成では、シーンやカットごとの細部に集中しすぎるあまり、全体の流れやバランスを見失いやすくなります。そのため、必ず全体を俯瞰してストーリーや演出のつながり、テンポ、リズムなどを意識することが大切です。カットごとに工夫を凝らしても、前後のシーンとのつながりが悪いと、視聴者にとって分かりにくくなったり、冗長に感じられてしまうことがあります。
ストーリー全体の流れが自然で、印象的な場面が要所要所に配置されているか、場面転換がスムーズかどうか、意識的に見直しましょう。また、絵コンテ完成後には全編を何度も見返し、客観的な視点でチェックを行う習慣をつけることで、完成度や説得力の高い映像コンテンツにつながります。
絵コンテの制作手順

絵コンテのフォーマットを用意する
まずは絵コンテのフォーマットを用意することから始めましょう。フォーマットに関しては、別の項目で紹介したように、インターネット上にあるフォーマットを使っても、または自分でコマ割りをしてフォーマットを作る方法でも問題ありません。
なお、絵コンテのフォーマットを作る際に必要なものとしては以下のとおりです。
- タイトル
- シーン(ナンバー)
- カット(ナンバー)
- ピクチャー(場面イメージ)
- アクションやカメラの動き(ト書き)
- タイム(尺)
動画の内容、構成を考える
フォーマットを用意したら、目的やターゲットに合わせて「何を伝えるか」を洗い出し、動画の内容や構成を考えましょう。最初から絵コンテを描きながら動画を想像してしまうと、描きやすい、撮りやすい構図に偏ってしまう恐れがあります。
ポイントは伝えたい内容の優先順位をつけること、視聴者のニーズに合った構成にすることです。
セリフやナレーションを書き込む
絵コンテは絵を描くよりも先に、セリフやナレーションを書き込みます。先に絵を描いてしまうと、セリフやナレーションによっては不自然なものになってしまう恐れがあるためです。セリフやナレーションは絵コンテの軸にもなるからこそ、動画全体の流れを意識しながら書いていきます。大事なポイントは、一つひとつのセリフを長くしすぎないことです。
カット割りの時間配分を決める
カット割りとは、各シーンの場面やカットのつながりのことです。カットとは映像の単位で、カメラを一度回して(録画して)止めるまでの区間を指します。1つのシーンでアップや引き、アングルを変えたりと様々なカットを撮影します。
カット割りの時間配分は長すぎてしまうと場面の展開が悪くなってしまうため、基本的に1カット2〜10秒くらいにしておくのがおすすめです。配分時間の決め方としては、時間を計って各シーンを区切っていくことで適切なカット割りができるようになるでしょう。カット割りができたら、カメラワークや演出を細かく書き込みます。
シーン番号・カット番号を決める
次は、シーン番号やカット番号を決めていきましょう。撮影の最小単位を「カット」といい、複数のカットをまとめた場面単位を「シーン」と言います。番号を決めることにより、編集段階でどのような素材を使うのか整理しやすくなるためです。撮影スタッフと編集スタッフの共通認識として活用できるため、必ず決めておきましょう。
イメージやシナリオに沿った絵を描く
最後に、イメージやシナリオに沿った絵を描いていきます。絵を描く際には具体性はもちろんのこと、出演者の動きやカメラの動き、背景、テロップの有無など、スタッフ全員がイメージを共有できるようにわかりやすく描くことが大切です。
イメージが湧かないのであれば、ネット検索でイメージに関する画像を調べて参考にするのも1つです。そのまま使うのはおすすめできませんが、イメージに近い構図をすぐ見つけられるでしょう。ポイントは、カットに合った構図になっているか、場面を効果的に表現ができているかということです。
絵コンテから撮影の準備までの流れ

絵コンテの制作手順はこれまで紹介したとおりです。また撮影準備の際には、絵コンテに合わせた撮影のタイムスケジュールを作りましょう。スケジュールは全スタッフおよび全キャストに必要で、具体的に組んだタイムスケジュール表(専門用語として香盤表といいます)を使って撮影がスムーズに進行することも大切です。
Tips:専門用語を知っておきたいなら動画撮影で押さえておきたい用語20選Part1

撮影当日の時間内で必要なものをすべて撮り終えることが理想であるため、余裕を持ったスケジュールを組んで撮影しましょう。
まとめ

今や動画コンテンツの活用は当たり前の時代です。撮影機材や編集アプリなどの進化により、自社で動画制作をする機会が増えているかもしれません。
そこで今回は、初心者でもわかりやすい絵コンテの作り方を解説しました。絵コンテを用意することで制作スタッフ間での意思疎通として使えたり、動画全体の構成を関係者が把握しやすくなったりする役割があることをご理解いただけたと思います。
この記事で紹介したポイントを踏まえつつ、手順に沿って絵コンテ作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。動画制作の内製化の際にもきっと役立つでしょう。
私たちはプロとして、絵コンテのご提案から撮影、編集まで効果の上がる動画制作を心がけています。動画制作に関するお悩みやご相談は、弊社までお気軽にお問い合わせください。